C A V E - 建物のコンテクストからうまれた空間 -
既存建物と空間コンセプト
敷地は三田駅から徒歩15分程度にある築50年を超える中古マンションで、4階71.15m2約21.5坪の住戸リノベーションです。
リノベーションをした既存マンションは、敷地アプローチを進むと真白な雁行したファサードに、二つの曲線を組合せたバルコニーが特徴的な建物が現れます。敷地内をさらに進むと変形コの字の中庭があり、その上部に人工地盤の屋上庭園も設けられています。建物からは当時の時代背景や設計意図を感じることができるものでした。
このような体験のあとに改修前の住戸に入った際に、既存プランにどこか建物と内装のズレや違和感を感じました。よって、今回のプロジェクトでは、既存マンションの特殊形状や配置計画を、スムーズに内装にとりいれることを意識しました。その結果、敷地外から住戸内がシームレスな体験となり、相乗効果がうまれることをコンセプトとしました。
今回リノベーションした住戸は雁行配置から室内に45度のラインがうまれており、正方形のメインの空間の南側に三角形の空間、西側と北側に小さな正方形が付いているという特徴的な形状でした。新しい計画では45°ラインと特殊形状をポジティブに利用することを考え、45°ラインを起点としてレイアウトを行いました。その結果うまれた角度は、四角い部屋を直角に移動するのではなく、方向性の希薄な空間が奥に拡がって伸びていくような効果をうみだしました。こうしてうまれたワンルームの空間に必要諸室を配置していき、曲線モチーフの間仕切壁や開口部を、ランダム性を意識しながら空間に配置し、シームレスな連続空間としました。
なお、今回の住戸は採光が西面になっているため、直射日光を取り入れるというよりは、やわらかい関節光を取りこみながら、室内に広げていくようなイメージとしました。
このようにしてうまれた空間は、既存建物のコンテクストを引継ぎながらも新しい解釈を与え、建物形状とは異なりながらも連続性を持った、現代の洞窟のような静穏空間となりました。
□計画概要
所在地:東京都港区 用途:マンション 家族構成:夫婦+子供1人 構造:SRC15Fの4F